器物損壊で逮捕される?前科が付く?

器物損壊で逮捕される?前科が付く?コラム

他人の物を故意に壊すと器物損壊罪となります。

他人の家や塀、公共施設に落書きして、この罪が適用される事例もよくあります。他人の物を、正常な用途で使えなくした場合でも、器物損壊となるのです。

器物損壊罪は、犯罪の中では比較的軽微な罪ですが、これで逮捕され、有罪になることがあるのでしょうか。

器物損壊罪の流れを見ていきましょう。

器物損壊罪で逮捕される?

器物損壊罪でも逮捕はあり得ます。

ただ、他人のものをわざと壊したという事件では、逮捕までされる事例は多くありません。

一般的には、刑事罰を問うより、まずは損害を賠償するという民事の問題です。

過失による損壊の場合だとそもそも100%民事であり、刑事事件にはなりません。

こういった例とは異なり、器物損壊罪でも逮捕され、さらに大きく報道までされる犯罪類型があります。落書きです。

世間一般の認識では、落書きとは公共物の価値を大きく損ない、見苦しくする腹立たしい行為です。許せない犯罪だと考える人が多いものです。

いっぽう犯人の側、つまり落書きをするほうはというとバンクシー気取りで、アートパフォーマンスだと認識しています。世間の側はアートとは一切思っていないので、より非難が大きくなります。

ですから、落書き事件で犯人を逮捕し、実質的社会的制裁を与えることについては、社会の支持があるわけです。

逮捕が社会的制裁である側面は否定できませんが、落書きの場合、加害者が犯罪であることを認めないため取り調べが必要だという、実務的な要素ももちろんあります。

器物損壊罪で逮捕されたらこうなる

器物損壊材での逮捕は、現行犯逮捕も、逮捕状による逮捕もあります。

落書きの場合でいうなら、落書きしている現場を押さえられればその場で逮捕ですし、防犯カメラに一部始終が映っていれば、必要な証拠があるので逮捕状が請求できます。

中には、動画サイトに自分でアップし、これを証拠として逮捕される、情けない人もいます。

犯罪をした認識のない落書き犯については、身柄を押さえて取り調べをする必要性は高いといえるでしょう。併せて家宅捜索を行い、証拠を固めることもします。

逮捕、送検、勾留決定、起訴など

逮捕されると、強制的な取り調べが始まります。取り調べの時間以外は、留置場に入れられます。

逮捕後、最初の48時間は警察に、次の24時間は検察に身柄があります。

検察では、新たな取り調べをするとともに、勾留の決定をします。

勾留が決まった場合、最大20日、留置場を出られません。

逮捕後、必ずここまで進むというわけではありません。

器物損壊罪は本来微罪です。罪を認めて反省の意思を示し、また被害者の財産被害について賠償する意思を明確に示せば、複雑な事件でもないので釈放される可能性は大です。

警察の段階で、または検察に身柄を移された後でも、起訴するに値しないとして釈放されることはあります。犯罪事実が明らかであっても、起訴されないケースは普通にあり、この場合前科も付きません。

いっぽうで、証拠が十分そろったため釈放されても、悪質なので在宅起訴となることもあります。

起訴されれば裁判か、あるいは罪を認めているなら略式起訴で、罰金刑を言い渡されるケースもあります。

裁判まで進んだとしてもよほどのことがない限り、執行猶予もつかずに実刑ということはないでしょう。

法定刑として懲役もあるものの、通常これだけで刑務所行きとなる犯罪ではありません。

起訴されない可能性も高い

器物損壊罪は親告罪です。被害者の申告がない限り、処罰はされません。

ですから、逮捕された加害者に替わって刑事弁護人が被害者との示談を成立させ、被害届を取り下げてもらえれば、必ず不処罰となります。前科は付きません。

勾留されていても、釈放されます。

被害届の取り下げまでできなくても、損害額を賠償すれば刑事処罰の必要性は薄れます。やはり不起訴の可能性が高くなります。

このためには、留置所と取調室にいて身動きの取れない加害者本人に代わる、刑事弁護人(弁護士)の活躍が重要となります。

示談を速やかに成立させることが、前科を防ぐわけです。

相手方に支払う損害賠償金と示談金によって前科が付かなくなると考えれば、「犯罪ではない」といって意地を張り続けることが、いかに馬鹿げているかわかるはずです。

罰金刑で前科が付く可能性は高い

器物損壊罪がメディアで話題になるのは、落書き案件がほとんどです。

ほとんどの人は逮捕されると心身のダメージが大きく、観念するようです。

公共物への落書きの場合、民間人が相手のときのように示談は成立させづらいため、罰金刑が課される可能性は高いでしょう。

罰金刑でも前科となります。

器物損壊罪で逮捕されそうなときは弁護士に相談を

器物損壊罪について見てきました。

この犯罪がもっとも話題になるのは、落書きの際です。

どの犯罪にも言えることですが、きちんと反省し、弁償など後始末により、前科が付かなくてすむようになります。

逮捕されそうなとき、逮捕されたときは、ぜひ法の専門家である弁護士に相談しましょう。

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